Ohno ENT Clinic
JR青梅線牛浜駅より徒歩2分
東京都福生市にある耳鼻咽喉科医院・病院
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公開日:2022年9月20日
更新日:2024年9月14日
ご来院いただいた患者さんにご満足いただけるよう
心がけています
慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法(EAT・Bスポット療法)、舌下免疫療法
行っています
EAT・Bスポット療法を初めて受けられる方へ
上咽頭炎が疑われる患者さんには鼻咽腔ファイバースコープ検査を施行して、局所の所見を観察します。通常の観察光の他、NBI(帯域制限光)という特殊な光を用いて炎症の程度を評価しています。
治療の適応があると判断された場合にはEATを行います。
処置の手順ですが、あとで鼻からネブライザーを施行するため、あらかじめ鼻腔に局所麻酔剤と粘膜収縮剤のスプレーを行います。続いて1%塩化亜鉛溶液に浸した鼻綿棒で鼻から、咽頭巻綿子で口から上咽頭粘膜全体を擦過します。塩化亜鉛自体が多少しみますが、炎症があると処置後の痛みがより強くなります。炎症のある例では、塗布した綿棒に血液の付着が見られます。
しばらく唾液に血の混じることがありますが心配ありません。食物はここを通らないので、食事も普通にとることができます。処置に伴う痛みは、耐えられないほどのものではないと思われますが、中には処置を受けられない方もいます。
これまでの症例の経験では、主な症状は約8割程度の方の改善が見込まれます。逆に言うと、必ずしも全例の症状が良くなるという保証はありません。ある程度の処置を行っても症状が改善しない場合は本療法は無効と判断されますので、治療方針を変える必要があります。
EATを希望される場合は、その点を御了解の上、治療を受けられるようお願いいたします。
治療は咽頭処置とネブライザーが主体になり、保険適応で行っています。内服などの薬物療法は原則行いませんが、症例によっては消炎剤や去痰剤などを併用します。
鼻咽腔ファイバースコープ検査は保険点数が600点(6,000円)です。
初診時にファイバースコープ検査を施行した上で上咽頭処置、ネブライザーを施行すると、窓口支払は3割負担で約3,000円となります。
再診で処置、ネブライザーを施行した場合の窓口支払は、3割負担で約350円となります。
再診時に評価のためのファイバースコープ検査を行うときは、これに3割負担で1,800円が加算されます。
EATの治療成績
当院で施行した上咽頭擦過療法の治療成績を呈示します。
2022年7月発行の日本口腔・咽頭科学会誌(第35巻2号p138-145)に掲載された内容です。
治療前後に、症状のアンケートを施行した154例を対象としました(アンケートにご協力頂いた患者さんに感謝いたします)。
男性34例、女性120例、平均年齢は51.8歳でした。
主訴(いちばん主な症状)は、後鼻漏が29例、咽喉頭違和感が24例、咽頭痛が20例で、他には咳、痰、嗄声(声がれ)、めまいなど多彩でした(下表)。
EATを施行し、症状及び内視鏡所見の改善について検討しました。その結果、 主訴の改善率は85.7%、内視鏡所見の重症度分類を行った結果の改善率は76.0%でした。
治療前後における主訴および各自各症状スコアの改善率と統計学的検討結果を載せます(下表)。右表のnは治療前後のアンケートで1以上の記載があった症例数です。p値とは、統計学的に算出された値ですが、この値が0.05未満だと有意差があると判定します。
今回の検討では、アンケート用紙(下の症例呈示欄にあり)に記載のあったすべての項目に加えて、嗄声、疲労・倦怠感などの症状についても統計学上有意な改善が認められました。
初診時
H26.10.29
症例呈示
72歳女性(局所改善例)
右のどの違和感で受診した方です。
鼻咽腔ファイバーでは治療前に上咽頭粘膜の発赤、NBI(帯域制限光)で黒斑と呼ばれる黒い点と顆粒状変化が見られ、上咽頭右側(画面左側)に嚢胞が見られました。嚢胞を穿破してEATを継続したところ、EAT20回後の所見では嚢胞は消失、発赤・腫脹が改善して黒斑も消失し、違和感は和らぎました。
<上咽頭所見の経過>
通常光
NBI
EAT前
EAT20回後
53歳女性(後鼻漏の他、関節痛も消失)
長年の後鼻漏があり、2年前からは肘・膝の関節痛に悩まされていました。
EATにより、上咽頭粘膜の発赤や腫脹は改善しアンケート用紙に示す通り後鼻漏の他、関節痛などの症状も改善しました。アンケート用紙下方には体調を示すスコア(NRS)があり、これも改善しています。
<上咽頭所見の経過>
通常光
NBI
EAT前
EAT20回後